隔離†ダンスフロア 絵が描けないので 忍者ブログ
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血迷って、妄想小ネタで空気の読めてない捏造を作文してみました。
小説どころか文として成り立っているかすら怪しいです。

これから寝て、起きたらいたたまれなくなって即行下げてそうな気がします。



マリーちゃんの初恋の相手はシュタインだったんだよね、というアレ。
(ここ、シュタデスだよね?)
(ええそうです。)
(だってシュタスピ+マリーって好きなんだもん。)


※ この話には一部原作設定とは異なる描写のシーンがあります。
   原作で登場する前に書いたものということでご容赦くださいませ。




 少女は深いため息をついてうなだれた。今日ほど自分の方向音痴を呪ったことはない。
 今年死武専に入学したマリーは入学式に出席するため講堂へ向かっている。はずだった。

「あんなに大きな建物なんだし、人もいるから迷わないわよね」

 私服登校のためにしつらえた真新しい通学服に袖を通し、意気揚々と下宿からひとりで出発したマリーは、1時間後なぜか人気のない建物裏に迷い込んでいた。
 デスシティーに引っ越してから何度も下見をし、街そのものには多少慣れてきている。しかし死武専は大きい。重度の方向音痴であるにもかかわらずあまり自覚がないため、周囲を軽く見物してこようと講堂への案内からはずれたのがまずかった。
 よく判らない壁や建物に囲まれた通路からどうやって講堂に戻ればよいのか判らない。そもそもここが死武専の敷地内かどうかも怪しい。
 初日から遅刻をしては困るからと早めに出発したし、死武専の独特なチャイムも聞こえないので、まだ式典は始まっていないと思いたい。

「早く講堂に戻らなくちゃ入学式が始まっちゃう…なんで他のところを見ようなんて思っちゃったのかしら、私のばかばか!」

 やわらかい金髪を左右に揺らしながら少女らしいかわいいしぐさで振り上げた片手は手近にあった壁に当たり、けっして脆くはない金属製の飾り支柱をあっさりとへし曲げる。外見にそぐわない膂力は彼女が魔武器としての特質を備えている故だった。

「いったーいっ! もう、いやんなっちゃう」

 膂力はあっても痛覚や皮膚の強度は人並みなのだろう、涙目になりながらで赤く擦り切れた甲にふぅふぅと息を吹きかけて痛みを誤魔化すと、マリーは今来た道だと思われる方向に歩を進めた。

 道があるのだからどこかに続いているはずだが、死武専は日頃から心身を鍛えるために複雑な構造に作られており、目的地へ無事辿り着けるとは限らない。
 講堂へ辿り着けなくてもとにかく誰かに会えれば道を尋ねることができる、と塀と思しきものに左手を沿わせ伝いながらすすむ。こうすれば迷っても同じ場所を堂々巡りしなくてすむのだと、マリーの方向音痴を心配した父が教えてくれた。もっともこの方法は最悪入り口のない場所を延々と周回することになるかもしれない方法なのだが。
 もう卸したての靴で作った靴擦れが痛くてたまらない。疲れたし心細いしで、誰でもいいから助けて欲しかった。

 建物の隙間から太陽の光が大きく差し込んでいる場所を見つけ、思わず駆け出す。チェックのスカートを白く汚しながら走ると、そこには塀の出入り口らしい鉄格子の扉があった。
 普段から何かに使われる用途があるのだろうか、鉄格子の前は広場のように開け、金属と木の板で作られた荷台のようなものがいくつか設置されている。
 そのひとつに、小さな人影がちょこんと座っていた。
 やっと人に会うことができた嬉しさに、思わずマリーはその人影に声を掛けながら走り寄る。

「あ、あのっ、すみませんっ」

 それは自分と同じくらいの年恰好をした白い服を着た子どもで、荷台に足を持ち上げて塀に寄りかかり、腿で支えるようにして厚い本を読んでいた。

「あの・・・」

 マリーの声にぴくりとも反応しない。本に集中していて周囲が見えていないのだろうか。白い髪で隠れた顔は可愛らしい輪郭をしていたが、少年なのか少女なのかも判らない。
 大体こんな時間にこんなところでひとりで本を読んでいる子どもなんておかしいような気がするが、今はそんなことを気に掛けている場合ではないのだ。

「もしもし? 校舎はどっちですか?」

 再三の声掛けにやっとゆるゆると、子どもは面倒くさそうに顔を上げマリーを見返す。隈の出来た目元を除けば整った顔立ちをしている。

「ここも一応校舎の裏だけど?」
「講堂に行きたいんです、早く行かないと入学式に遅れちゃうんです」
「ふうん」

 大きな金色の瞳に今にもこぼれそうな大粒の涙を浮かべるマリーには全く興味がない様子で、子どもは再び本に目線を落とす。
 その時、独特の音階で死武専のチャイムが鳴り響いた。最初のチャイムなので予鈴だろう。

「あああっ! 始まっちゃう・・・どうしよう・・・」
「そこの扉から校舎へ入れるよ」

 本から目を離さずに声だけで、マリーの質問には答えてくれた。意図的に無視しているわけではないらしい。

「あ、ありがとう」
「今からいっても、あんたじゃ講堂まで15分はかかるだろうけどね」
「う・・・」

 同年代の中でも小柄でしかも武器であるマリーは、早く歩くのが得意ではない。まして目的地までの道筋がはっきりと判っているわけではないし、今は靴擦れができているからとても走ることはできない。どう頑張っても入学式に間に合う気がしない。

「あの、あなたは何でここにいるの?」
「あんたには関係ないだろ」

 そっけなく言い返され、マリーのしおれていた気持ちにカチンと火がつく。何で死武専の建物のことが判るのかは知らないが、自分と同じくらいの背格好をした子どもならデスシティーでは死武専以外でも普通の学校へ通っているはずだ。魔武器なのだろうか。

「そんな言い方ないじゃない。大体こんな時間にこんなところでひとりで本を読んでいるなんておかしいわ。・・・えっと」

 抗議の言葉を続けようとして、初めて相手の名前を知らないことに気がつく。

「私、マリー・ミョルニル。あなたは?」

 マリーの自己紹介に、今まで全く興味がなさそうだった子どもがピクリと反応する。

「マリー・・・ミョルニル?」

 繰り返した声と視線は先程までと違い、きちんと彼女を見ている。はっきりと意思を持って会話をするその声音は少年のものだ。

「ええ、そうよ。あなたのお名前は?」
「・・・フランケン・シュタイン」
「シュタイン君。あなたなんでここにいるの?」
「暇だから」
「学校は?」
「今日は入学式で用はない。でも帰ると怒られるから」
「まあ、そうだったの」

 マリーは頬に手を当てて思案する。授業がないなら別に彼がどこで読書しようが彼の勝手だ。

「それは余計なことを聞いてごめんなさい。誰にも事情はあるわよね。・・・って、どうしよう、間に合わないわ!」

 はたと自分の境遇を思い出し、またもや泣き出したくなってきた。しかしここで嘆いているだけでは始まらない。

「とりあえず講堂に向かわなきゃ。教えてくれてありがとう」

 踵を返して靴擦れが痛む足を引きずりながら鉄格子の扉へ向かおうとしたマリーの背後で、パタンと重い紙束が閉じられる音がする。

「間に合わせてやろうか」
「え?」

 マリーが振り返ると、シュタインは本を脇に置いて荷台から降り立ち上がる。小柄なはずの自分と同じほどしかない背丈のシュタインから、なぜか妙に圧されるような気がする。

「入学式に間に合うよう、講堂に連れてってやろうか、って言ったんだ」
「え、だ、だって、講堂までは15分かかるんでしょう?」
「あんたひとりの足なら15分だけど、俺となら5分とかからずにあんたを講堂に連れてってやれるよ」

 言っている意味が判らない。抜け道でもあるのだろうか。かわいらしく小首をかしげてみると、シュタインはヘラヘラと口元を緩ませながら右手をマリーに差し出す。その掌にはくっきりと握りダコができていた。

「あんたを俺に持たせてよ、魔槌マリー・ミョルニル」
「シュタイン、あなた・・・死武専の職人なの?」

 マリーは驚きのあまり黄金色の瞳を大きく見開く。
 死武専は年齢に関係なく入学できるが、パートナーとの共同生活が推奨されるため職人はある程度自活できる年齢になってから入学するのが通例だ。それになぜ自分のことを知っているのか。
 シュタインの瞳には何やら穏やかでない光が灯っているが、他人を疑うことを知らない素直な育ちのマリーは気付かない。

「でも知らない人に持たせてはだめってお父様に言われてるわ。職人にけがをさせてしまうからって」

 確かに職人であれば魔武器と共鳴すれば身体能力が飛躍的に高まるから、マリーが歩くよりもずっと早く走破できるかもしれない。しかし魂の波長の合わない魔武器と職人は反発しあうので、触れた部分に激しい熱を発して職人を傷つけることがある。まだ訓練をしていない子どものマリーでは加減もできないからと、同じく魔武器である家族から強く戒められて育ってきた。
 近しい血筋で複数の魔武器が生まれる家系の存在が実はとても珍しいことなのだということを、彼女はまだ知らない。多くの魔武器たちがいわゆる先祖還りの形で生まれるため、周囲の理解のなさが原因で不幸な生い立ちになることも多く、そういった武器たちは極力死武専によって速やかに保護、養育される。そういう意味ではとても恵まれた育ち方をしている部類だろう。

「俺なら持てるから大丈夫」

 なぜそんなに自信を持って言い切ることができるのだろう。この手を取ってもよいのだろうか。手袋すらしていない素手で反発しあったら、この白い手に火傷を負わせてしまうかもしれない。

「早くしないと式が始まるよ? 別にあんたが遅刻しても俺は構わないけど」

 逡巡するマリーに苛ついたのか、シュタインの口調が険しくなる。迷っている時間はない。

「・・・判ったわ。お願いします」

 強い決意の光を瞳にたたえ、マリーはシュタインの手に右手を乗せしっかりと握った。
 不都合があればすぐに変身を解けるよう慎重に武器へと身を変えたマリーは、女性らしく繊細な細工の施された美しいフォルムのポールハンマーだった。本人がまだ幼いせいかサイズも小さめで、同じく小柄のシュタインの身の丈にちょうどよい。
 シュタインの魂の波長に触れたマリーは一瞬ひるんだものの、軽くしびれるような刺激ののち徐々に浸透していく心地よさに身を委ねる。危惧したような不響は表れない。
 シュタインはマリーを握り締めると、手ごたえを吟味するかのように大きく振り回す。波長の反発がないどころかその所作は明らかに長物を持ちなれている者のそれで、マリーは驚きに目を見張る。

「いくよ」
『はい』

 初対面の相手にも関わらず、ふたりはすんなりと魂の波長を合わせることができた。マリーと本で両手を塞ぎ、自信を持って言い切った通りに当然のような顔をしてシュタインは塀に向かって助走すると、荷台を踏み台にして7フィートはある塀に飛び乗り、そのまま塀の上を走り出した。




『すごいわあなた、こんなの初めて!』

 塀を伝い小屋を横切り大きな校舎を突っ切り、また別の校舎の裏手を抜ける。同調するシュタインの眼から流れ込んでくる景色は今まで経験したことのない目まぐるしさで、その心地よい刺激はマリーを高揚させる。まるで遊園地のジェットコースターのよう。
 正確にはシュタインがマリーの波長に合わせてくれたのだが、武器として扱われた経験が少ないマリーにとってこの相性の良さは運命の出会いともいうべき錯覚を起こさせるのに充分だった。
 もしかしたら、この人が私のパートナーなのかもしれない。
 朝っぱらから人気のない場所で本を読んでいる変わり者の少年だったシュタインは、マリーの中で、窮地に立たされていた自分に手を差し伸べて助けれくれた白い王子様に変換されていく。
 世間知らずな少女に芽生えた淡い恋心は、しかし魂の波長を合わせている最中の本人に半ば筒抜けだ。

「違うよ」
『え』
「俺のパートナーはもういるし、別にあんたと波長が合う訳じゃなくて俺があんたに合わせてるだけだから」

 運命を感じた相手から即否定され、幼い乙女の初恋は一瞬で散らされてしまった。
 ショックで心のしぼんでしまったマリーの魂の波長が弱まると、途端に波長がずれて武器の質量が重くなり、シュタインの身体能力が低下する。とうとう片手で持ち上げることができなくなり、シュタインは仕方なく足を止める。

「何やってんの。しっかりしてよ」

 膂力だけで支えられる重量の武器ではないし、走れなければ入学式に間に合わない。しかしマリーの心をへこませたのはシュタイン自身の言葉だ。

「間に合わなくなって困るのはあんただろ」
『だって・・・そんなはっきり言わなくたって・・・』

 傷つきやすい乙女心に気を使うなどというデリカシーは、女心の研究に余念のないパートナーはともかく、シュタインは持ち合わせていない。

「あんた、その程度の武器なわけ?」
『なんですって?』

 職人としての失望を露にしたその一言が、武器としてのマリーのプライドに火を付ける。

「だってあんたミョルニルなんだろ?」
『そうよ』
「だったら本気出してよ。俺はあんたの性能が見たいんだから」
『言いたい放題ね』
「だって興味あるんだもの。さっきまではいい感じだったんだからできないはずない。俺を気持ちよくさせて、式に間に合わせてみせてよ」
『・・・いいわよ。見せてあげる』

 傷ついた繊細な乙女ではなく、魔武器として、北欧神話に登場する主神の武器の名を持つ一族の娘としての誇りがマリーを奮い立たせる。この不躾な職人に自分の実力を見せ付けてやりたい。
 マリーは心を落ち着かせ、意識をシュタインの魂の波長に集中する。ぶれた波長を研ぎ澄ましシュタインに送り込むと、力強く増幅された波長が流れ込んでくる。また送り出す。受け止める。お互いまだほんの10年と少ししか生きていないとは思えないレベルの、資質と矜持のせめぎあいのような魂の波長の昂ぶりに、活力を取り戻したシュタインがにんまりと口の端を吊り上げる。

「いいねぇ。やればできるじゃない」

 少女の初恋を破った素敵な王子様ではなく、興味の先にある本質を貪欲に求める研究者がそこにいた。


 長槌を構えて全力で校内を走り抜ける白い影が講堂の前に辿り着いた時にはすでに新入生の姿はなく、案内係の上級生がひとりぽつんと立っているだけだった。
 建物の影から抜け出た時からすでにシュタインを見捕らえていた上級生が驚いた顔で出迎えるのが、シュタインと同調するマリーにも判る。動体視力の良さだけではない、シュタインが意識してその人を見ていたから。

「シュタイン!何やってんだ!」
「スピリットこそ」

 講堂の入り口で止まったシュタインは、どう見ても年上な案内係の学生を呼び捨てにする。どうやら知り合いらしい。シュタインよりも頭ひとつ長身なスピリットと呼ばれた赤毛の上級生は、何故か慌てたような、腹を立てているような、複雑な表情をしてシュタインとマリーを交互に見る。

「俺は新入生がひとり来ないから待ってんだよ。それより誰だよそのハンマー」
「これ? スピリットのお待ちかねの相手だと思うよ」
「は?」
「ちょっと! これはないでしょこれは!」

 直前まで魂の波長を合わせていた相手のあまりの言い草に、思わずマリーは声を荒げて抗議する。シュタインが心底面倒くさそうな顔をして手から武器を離すと、金色のポールハンマーは可愛らしい金髪の少女の姿に戻り、上級生の目の色が変わる。

「間に合わせたんだから文句ないだろ」
「それはそうだけど、ちゃんと名前で紹介してよ」
「シュタインお前なんで他の武器持ってんだよ、しかもこんなかわいい子を」
「あらかわいいだなんて」
「いやホントかわいいね君」
「自分の職人が別の武器持ってる理由を問い詰めるか、女を口説くか、係をまっとうして新入生を案内するか、どれかにしたらどうなの、スピリット? マリーは何の為にここにきたの?」

 武器ふたりの目的と会話が微妙にずれはじめたことに、職人が冷ややかに釘を刺す。どうやらこのスピリットという上級生がシュタインのパートナーらしい。

「いけない、入学式が始まっちゃう」
「え、君がええと・・・マリー・ミ、ミョルニル?」
「はい!すみません遅くなりました!」

 スピリットがボトムのポケットから縦長に折りたたまれた新入生名簿を取り出して早口言葉のような名前を確認すると、マリーが元気いっぱいに返事を返す。どうやらこのふたりはどこか似ているらしい。

「もうみんな中にいるから急いで」
「はい。・・・あ、」

 スピリットに急かされたマリーは講堂へ入ろうとして、足を止め振り返る。

「シュタイン君、助けてくれてありがとう。あとで御礼をさせて」
「別にいい。面白い経験ができたし」
「それじゃ私の気持ちが収まらないわ」
「じゃあひとつ俺の言うこときいてよ」
「いいわよ。なに?」
「一度あんたを解」
「だーっ!マリーちゃんそれはだめだ!シュタインお前も本気にすんなよ絶対だめだからな!」

 ヘラヘラと笑うシュタインと律儀なマリーの間にスピリットが割って入る。シュタインの言葉が聞き取れなかったマリーには、なぜこの人が必死になっているのか皆目判らない。

「と、とにかくマリーちゃんは着席しようね?」
「じゃあ、式が終わったらまた来るから」
「おう。ばっくれんなよ」
「またね、シュタイン君」

 既にマリーには興味がなくなったシュタインはさっさと踵を返して立ち去っていく。愛想笑いを浮かべて先を急がせるスピリットに促され、マリーは入学式へ参列するべく講堂へ入っていく。
 シュタインのことは彼のパートナーであるスピリットに聞けばいいし、一瞬で終わってしまった初恋の相手でもお友達にならなれるはず。魂の波長を合わせた時に感じた彼の本質は悪いものではなかったし、ちょっと変わり者みたいだけれど、いろんな人と仲良くすることはマリーにとって良いことだ。時間はまだたっぷりある。


マリーのウキウキワクワク死武専ライフはまだ始まったばかり。







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マリーちゃん即失恋。
シュタスピベースでシュタ視点とスピ視点と3点セットですが、いつ上がるかは未定です。




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